11月11日にアマゾンジャパン本社で行われた、「Kindleフォーマットセミナー」に参加してきたのでレポートさせていただきます。内容は以下の通りです。
- Kindle Overview(Kindleの概要) ← 本稿はここ
- 商品情報とお客様の利便性
- Kindle本を制作、出版するためのツール、ドキュメント、ビューワ最新情報
- Kindleコミッククリエーター(KC2)で作る、簡単マンガ(写真集)制作
- Kindle用EPUB制作に関するTipsと注意点
セミナー中の撮影・録画は禁止されていたため、ほとんど文章のレポートになります。実は11月11日のセミナーは東京では2回め、大阪でも1回開催されており、通算3回めの開催です。1回めの10月11日は告知をした瞬間に満席になってしまったため、急遽(きゅうきょ)2回めを開催したそうです。参加者はKindleですでに出版している人や、制作している人がほとんどでした。
日本におけるKindleの歴史と特徴
日本のKindleは、2012年10月25日にストアオープンし、つい先日1周年を迎えたばかりです。1年間やってきて、マルチプラットフォームだということを知らない人がまだまだ多いことを痛感しているそうです。KindleのフォーマットはEPUBがベースなので、HTMLやCSSを知っている人ならそれほど制作のハードルは高くありません。また、「自費出版」にはある程度のお金が必要ですが、Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)での出版にはとくに費用を必要としません。日替わりセールや、月替りセール、Kindleオーナーライブラリー、Kindleセレクト、Kindle連載など、さまざまなプロモーション手段も用意されています。最近の傾向としては、新刊の紙とデジタル同時発売が増えてきたそうです。紙の本をが完成した後に電子版を作るのではなく、紙のデータを作る工程と同時に電子版を作る必要があるため、出版社や印刷会社のワークフローが大きく変わっていくことになる、という予測をしているそうです。
Kindleの機能デモ
Kindleの機能デモでは、日本語の句読点ぶら下がりとか、文字の大きさ変更(リフロー)ができるとか、余白や行間が変えられるとか、視覚目次と論理目次(ナビゲーションファイル)の2種類があるといった説明がありました。とくにナビゲーションファイルは[移動]メニュー以外にも様々なところで利用されており、例えば「章を読み終えるまで」の算出ロジックにも使われているそうです。だから、ナビゲーションファイルが付いていないデートを入稿すると、Kindleのコンテンツクオリティーチームから「付けて下さい」という連絡がくるそうです。
Kindleで出版する
続いて、Kindleで出版するための入稿データについて。必要なのは、コンテンツファイル、カバーイメージ、書誌情報の3つです。Kindle本のコンテンツファイルに必要な要素は、以下の通りです。ここは資料に[重要]と書いてありました。
- 表紙 …… タイトルと著者名が必ず記述されていること
- ナビゲーション …… [移動]メニューに各チャプターへのリンクが必ず表示されること、本の目次ページへのリンクを設定すること
- 画像の品質 …… 画像に文字が含まれる場合は、明瞭に読める画質であること
- 固定レイアウトの場合は、Kindle固有の.opfの記述に沿っていること
画像の品質に関しては、Kindleストアのスタート時に、携帯電話向けの小さい画像を変換したようなものが存在していたという話をされていました。Kindleで初めて電子書籍を読んだ人が、紙と品質を比べてしまいガッカリする、ということがないよう、最初の印象を大事にしましょうとのことでした。
更新したら[お問い合わせ]から連絡
出版済みのコンテンツファイルを差し替えたら、[お問い合わせ]からAmazonに連絡をします。大きな変更が入ったとAmazonが判断した場合は、購入者へ最新版のお知らせメールが配信されます。購入者の手元にあるファイルは自動的に更新されるわけではなく、自分で[My Kindle]を開き、[アップデート版を利用可能]をクリックする必要があります。例えば、最初に出版したのが春バージョンで、「秋バージョンに改訂したのでお知らせして下さい」というのは、お知らせメールを送らないそうです。通常は、最初に出版した時点で完成していることというのが前提だからです。「Kindle連載」は、アップデートし続けることが前提になっている例外ですね。質疑応答で、「どの程度の変更でお知らせメールが配信されるのか?」という質問をしてみました。というのは、私の事例として、画像の8割を差し替えて、文章を2割くらいは書き直したのに、お知らせメールが配信されなかったからです。しかし、「通常なら、そのくらい差し替えていればお知らせメールが配信されるはずです」という回答。おかしいな?と思ったら、再度お問い合わせから連絡下さいとのことでした。
Kindle Format 8(KF8)について
続いて、Kindle Format 8(KF8)について。KF8で制作できる本は、EPUBと同様に、リフロー型(文章用)と固定レイアウト型(漫画や写真集など)です。ただ、EPUB と Kindle Format 8 は同じものでありません。EPUB 3が対応しているタグやスタイルに、Kindle Format 8 は全て対応しているわけではないのです。だから、制作をする前に必ず「Kindleパブリッシングガイドライン」と「日本語サポート補足資料」と「品質ガイドライン」の3つを読んで下さい、とのことでした(URLが変わる可能性があるので、KDPヘルプのトップページにリンクを貼っておきます)。サポートするタグやスタイルは順次拡張中なので、これらのガイド資料も結構なサイクルでバージョンアップしているそうです。最終アップデート日付を、どこかに記載して欲しいところですね。Kindleフォーマットのソースファイルは、EPUBと、XMDFにも対応しています。KDPはWordにも対応していますが、日本語はテスト段階なので非推奨だそうです。英語ならほとんど問題ないようですが、日本語対応(縦書きやルビ)がまだダメみたいです。
KindleGenとKindleプレビューツールについて
どちらも、Amazonが提供している無料ツールです。Kindleダイレクト・パブリッシング ヘルプの「KDPツールとリソース」からダウンロードできます。KindleGenは「キンドル・ジェン」と読むそうです。これは、EPUBをコマンドラインで.mobi(KF8)に変換するツールです。「なんでいまどきコマンドラインやねん」という気もするのですが、Kindleプレビューツールでは使えないオプションがあるとのこと。そういうオプションが利用したい場合だけ、KindleGenを使えばいいということでしょう。Kindleプレビューツール(=Kindle Previewer)は、パソコン(Windows・Mac)上でEPUBを.mobi(KF8)に変換し、プレビューできるツールです。変換機能はKindleGenと同じなので、普段はこっちを使えばいいと思います。セミナー時点での最新バージョンは v2.92です。どちらのツールも、資料と同様に結構なサイクルでバージョンアップしています。Kindleプレビューツールの自動アップデートはなぜか効かない場合があるので、念のためサイト側も時々チェックしておいた方がいいかもしれません。
なるべく実機で検証を
EPUB ≠ KF8なので、変換後は必ず表示を確認しましょう。Kindle Paperwhiteや、Kindle for Androidアプリ、Kindle Fireシリーズの場合は、USBでパソコンに接続し、mobiファイルを[Kindle]フォルダーか[Documents]フォルダーに入れればOKです。iOSの場合は、Kindleプレビューツールでデバイスを[Kindle for iOS]にして変換すると、iOS用のazkファイルが生成されるので、それをiTunes経由でKindleアプリにコピーすればいいそうです。Send to Kindleでmobiファイルを送信しても、正しく表示されないので注意が必要とのことです。
手順は以下の通りです。
- iPhoneやiPadをパソコンに接続する
- iTunesサイドバーの[デバイス]に表示された、接続した端末を選択
- 右側上部のタブから[App]を選択
- 下の方にある[ファイル共有]から[Kindle]を選択
- [追加]からiOS用のazkファイルを選択
これでiOSのKindleで検証できます。
Kindle用のEPUB
Kindle用のEPUBは、.opfファイルにKindleフォーマット用の記述を入れなければならない仕様だったのですが、最新版のKindleGenとKindleプレビューツールなら、ほぼ通常のEPUBの.opfの記述のままでOKになったそうです。綴じ方向は右からor左からの一方しか指定できませんが、縦書きor横書きはページごとやtagごとに指定可能とのことです。
リフロー型制作時の注意点
AudioファイルやVideoファイルはサポートしていないので、埋め込むことはできません。また、ユーザーがビューワの設定で背景色を変更できるので、背景色や文字色をスタイル指定すると読めなくなってしまう可能性があるので避けること。 display:none や透明GIFなどで空白行指定をしないこと。縦書きの傍線を右にする場合はスタイルで a{text-decoration: overline} を指定すること、などを挙げていました。
固定レイアウト型制作時の注意点
リフロー型との混在はできないので、1ページに1つの画像だけというxhtmlファイルで構成される形になります。1ページの最大画像サイズは800KB、KDPの場合は全ファイル合計のファイルサイズが50MBという制限があります。制限を広げる検討はしているようですが、いつからという約束はできないそうです。また、固定レイアウト型のバーチャルパネルビュー(タップすると画面を4分割して拡大して表示)はKindle独自の仕様なので、表示順を変えるには独自の記述が必要とのことでした。
このセッションはあくまで概要というところで、後のセッションではもう少し詳しい説明がありました。ひとまずこの記事はここまで。